貧者の一灯 ブログ

信じれば真実・疑えば妄想

貧者の一灯・特別編












「おたくの近くの車道に、山から出てきたキツネがひかれているぞ」知人がそこを
通り見かけたので、連絡をくれたらしい。


電話を受けた父と私は、早速、飼い犬を連れて現場へと急いだ。
近所の子供たちも集まっていた。「キツネがひかれてるっぺー」 とキツネを見て
騒いでいる。


父は、すぐ道路からキツネを抱きかかえ連れてきた。キツネは血だらけで目を
つぶっている。 もう死んでいる…と私は思った。


飼い犬のハッピーが、キツネの方に近づこうとするので、
私も近づいてみた。


するとハッピーは、とっさにキツネの出血部分を必死になめだした。私は、
可哀想だがもう死んでしまっているし、 ハッピーに毒でも入ったら…と判断し、
ハッピーを引き離そうと引っ張った。


しかし、それをまったく気にせず、必死でキツネを助けようと なめ続けるハッピー
の姿に、私はこの時強く胸を打たれた。同時に、同じ生き物同士の「絆」という
モノを、 じかに感じ取った。私は頑張ったハッピーのためにも、 無事天国へ
行けるように強く願い、埋葬した。 この時のハッピーの姿をずっと忘れない。

※…

先日、私と妹が買い物へ行く途中、 車道に猫がひかれて生々しい血を流して
いる所を見かけた。周りにいたおじさんやおばさん達が、 「このままにしておいたら、
またひかれるわよ。  どうしましょう」と話していた。


私は、ここだ!と思い勇気をだした
私は思い切って言った。 「私たちがやります」
あの時のハッピーを思い出して、勇気をふり絞り、
猫の死体を妹と二人で協力して段ボールへ入れ、
車道の脇の方へ寄せた。


周りのおじさん、おばさん達は目を丸くして驚いていた。私たちは悪い気は
しなかった。その後、市役所の人が無事引き取っていったらしい。


あの時のハッピーのおかげで出来たことだ。ハッピーは、私に深い愛情と勇気
をくれた。 それはかけがえのない宝物。…









「五十肩」との病名が広く用いられているが、これは「肩関節周囲炎」の俗称である。
中高年者での肩の痛みと、それによって引き起こされる運動障害の代名詞として
用いられているのだ。


加齢による退行性変化(血流障害などが原因として考えられている)であって、
肩関節に明らかな器質的異常が見つからない場合の診断名と考えていただきたい。


江戸時代の辞書『 俚言集覧りげんしゅうらん 』には「およそ、人五十歳ばかりの
とき、手腕、骨節痛むことあり、程すぐれば薬せずして癒ゆるものなり。俗に之を
五十腕とも五十肩ともいう。


また、長命病という」とある。確かに長命病のひとつかもしれないが、喜んでは
いられない。とにかく痛いのだ。 腕を上げられない 夜も痛みで目がさめる  


Eさん(43歳、女性、飲食業)は「2週間くらい前から右の肩が痛くって、腕を
上げることができないんです。夜、寝ていても痛みで目がさめてしまって……
これって、あの五十肩ってやつなんですか?」として、私の外来を受診された。  


「なるほど、おそらくは“四十肩”でしょうね。念のために、右腕を前、後ろ、
横の順で上げてみてくれますか」と可動域(動かすことができる範囲)の確認
から診察を開始した。


結果、腕を前方に45度(腕を真っすぐ下に下ろした位置から180度が正常)、
後方20度(同、50度)、側方30度(同、180度)しか上げることができなかった。


まずは「 腱板けんばん 断裂」(肩甲骨と上腕骨をつなぐ四つの筋肉がまと
まって作っている腱が切れてしまう)を否定しておくためにMRI(磁気共鳴画像)
を撮影した。


40歳代前半の患者に病名を聞かれたら「四十肩です」  Eさんと同様の痛みを
訴えられる40歳代前半の患者さんから病名を聞かれて困ることがある。その場合
には、迷わずに「 四十・・ 肩です」と説明しているのだ。  


肩関節周囲炎では、痛みで腕の挙上が制限され、夜間の痛みのための不眠に
陥る。「シャンプーができない」「服の脱ぎ着が困難だ」などと訴えられる。多くの
場合、痛みは半年~1年で自然に消失し、再発することは少ない。


しかし、自然に治癒するからといって放っておいてはいけません。拘縮に
至ったものを「フローズンショルダー」(凍結肩)と呼び、肩をまったく動かせ
ない状態に陥ることもあるのだ。いずれにせよ、半年以上にわたり、髪の毛
を満足に洗えずに、腕を回せないのはつらい。なお、腱板断裂や「石灰沈着
性腱炎」でも同様の症状を来すので、これらとの鑑別が必要となるのだ。


治療は内服、湿布、ヒアルロン酸注入、運動療法、鍼治療  一般的な治療法
は、非ステロイド性抗炎症薬やトランキライザー(不眠に対して)の内服、湿布薬
の貼付、ヒアルロン酸ナトリウムの肩関節内注入などであり、運動療法も広く
行われている。


自宅でのアイロン体操(アイロン程度の重さの物を持って、振り子運動を繰り返す、
それ以上に重いものは逆効果である)も拘縮予防には効果的である。


肩甲上神経ブロック、トリガーポイント注射(押さえて痛みが起こる部位への
局所注射)などの治療を行い、良好な治療効果を得ている。発症早期であれば、
1回の注射で治ることもある。その他、 鍼はり 治療も効果的だ


“ 尺沢しゃくたく ”、“ 中府ちゅうふ ”、“ 手三里てさんり ”、“ 巨骨ここつ ”、“
外関がいかん ”と呼ばれる 経穴ツボ に鍼を刺入した上で10分間程度の
低周波通電を行う。  


Eさんは、検査の結果、腱板の断裂や肩関節内に石灰沈着などの異常は
見つからなかったことから、肩甲上神経ブロック、トリガーポイント注射を
1週間おきで2回行った。

3回目の受診時には「センセ、見て見て、腕をグルングルン回せるように
なったんですよ」と、笑顔でグルングルンを実演して見せてくれたのである。


痛みがとれて、以前は当たり前であった日常動作が、再びできた時の喜び
はひとしおである。患者さんが女性なら、ご自分で髪をばっちりセットして
受診されたら、しめたものである。


「洗濯物が干せたんです」「久しぶりにお布団を上げることができちゃって」
と、瞳を輝かせながら報告してくれたならば、医者の本懐と言える。  


体のパーツが耐用年数を過ぎて起こる障害の代表が、五十肩や“四十腰”
である。しかし、「耐用年数を過ぎてる? もうポンコツなんだ」とクサることはない。


「四十、五十は鼻たれ小僧」。その伝でいくと、まだまだ前途遼遠なエイジ
なのだから。










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