貧者の一灯 ブログ

信じれば真実・疑えば妄想

貧者の一灯・漢の韓信シリーズ





















越王勾践が講和を決断した仮定には紆余曲折が
ある。大夫范蠡は、当初呉との戦争には反対で
あった。


侵攻してきた呉に対し、応戦せずに和議を結ぶ
よう勾践に進言したほどである。  


その言を聞かずに勾践は応戦したが、結果は越
の敗北である。


勾践は、范蠡を召して問うた。


「余はあなたの言を用いず、このようなことに
なってしまった。どうしたらいいだろうか」  


范蠡は答えて言う。 「辞を卑くして礼を貴び、
珍らしい宝物や美女を贈り、呉王を貴んで天王
と呼ぶことです。


それでも呉が許さなければ、ご自分の身で……」
勾践はこの意味を解したという。


彼は即座に、 「わかった」  と言った。そし
て大夫種を呉への使者に任じて言わせた。


「どうか、士の娘は士にめあわせ、大夫の娘は
大夫にめあわせ、一緖に国家の宝器をおさめさ
せてください」  


しかし、呉王はそれで納得しなかった。


大夫種は越に戻り、また再び呉へ使者として赴い
た。 「どうか我が国の鍵をお渡しし国家を帰属
させ、身をもって従わせて下さい。


君王はこれをほしいままになさってください」


「我が国の鍵」とは、越王勾践その人のことで
ある。さらに「国家を帰属させ」……越は呉の属
国となることを提案した内容であった。  


夫差は伍子胥の反対を押し切る形で、これを了承
したのである。こうして勾践は捕虜となった。  


旅立つ前に、彼は言った。 「蠡よ、私のために
国を守ってくれ」  


しかし范蠡は、この申し出を退けた。 「内政や、
人民のことは、臣は大夫種に及びません。


一方外国の情勢のことや、臨機に決断をすること
にかけては、大夫種は臣に及ばないでしょう」こ
れは、国を守るのは文種の役目、ということである。


彼は、勾践とともに呉の捕虜となることを選んだ
のであった。つまり、二人とも奴隷となったので
ある。  


* … 
勾践が王位についてから五年目の五月、群臣は皆
揃って浙江のほとりに立った。勾践の出立を見送
ろうというのである。  


見送る側の大夫種は進み出て言った。


「大いなる天の助けは、先に沈み、後に浮かぶも
のだと聞いております。しかるに、災いは幸福の
前兆であると言えましょう。


人を威圧する者はやがて滅び、服従する者は後に
栄さかえるのです。


王はこのたび災禍を引き寄せたとはいっても、のち
にこれ以上の災いが訪れることはないでしょう。


いま、君臣は生きながら別れ、民衆は悲しみの底に
あり、苦しまない者はいない。


我々はいま、災いの底にあります。これは、祝う
べきことです。後に訪れるものが幸福なのですか
ら。……どうか私に干し肉と酒二杯を勧めさせて
ください」  


勾践はその酒を飲み干した。


「万歳を称えさせてください」文種は群臣に号令
し、万歳をさせた。  


その声の中で、勾践たちは船に乗って浙江を渡っ
た。彼は、ついに振り返らなかった。 …













独りで運転していた車が大破したそうです。


その知らせを受けたとき、私は出張先の根室に
いました。 帰るのは一苦労でしたが、具体的に
どう帰ったのかはほとんど覚えていません。


病院の霊安室で、妻と娘は包帯に包まれていま
した。 特に娘は全身が包帯で覆われていました。


車が完全に押しつぶされたため、とても悲惨な状
態だったと聞きました。


そのため、葬式の前に火葬することになりました。


私の記憶はぼんやりとしており、葬式は親戚以外
を招かない密葬となりました。


しかしながら、幼稚園の先生や妻の職場の上司は
来てくれた記憶があります。


彼らは妻と娘の骨壷を見て泣き崩れました。
だけど私は涙を流せませんでした。



※ … 葬式が終わり、家に戻りました。


そのままの洗濯物、炊きかけのごはん。作りかけ
のお菓子、そのままのPC。 画面にはクックパッド
のウェブサイトが開かれていました。


夜が来ても、朝が来ても、私は一人でした。


仕事に行く気もなく、家の中を整理していると、
徐々に妻と娘の姿や声が思い出されました。


二度と会えないという現実が心に沁みて、その後
三日間ほどは泣きながら過ごしました。


自殺しようと思ったが、結局は臆病で終わりました。



※ …毎晩、妻と娘の夢を見ます。


妻はいつも「頑張ってね」と私を玄関で送り出し
ます。 私は娘にキスをし、妻にもキスをして、
仕事場へ向かいます。


しかし、知らない人から「もういないんだよ」と
言われて目覚めます。


睡眠が浅くなりました。 いや、寝ることはでき
るのですが、また妻と娘に「キスしていないんだ
よ」と言われて目覚めます。



※ …体がだるいです。


体調が悪いとき、妻はいつもぬるめの白湯とビタ
ミン剤を出してくれました。 肩がこると、一生
懸命に揉んでくれました。


美味しかったハスカップや焼き鳥弁当の話を妻に
したかった。


家に帰るとき、蟹とエビとホタテと昆布を買って、
娘にまりもっこりをプレゼントする約束を思い出
しました。


それから、道の駅「スワン」で撮った写真を送って
いなかったことにも気づきました。


娘の小さな布団はまだ敷いたまま。 妻のカーディ
ガンは、椅子に掛けっぱなしです。



※ …
みんなは「時間が解決する」と言ってくれますが、
それは本当でしょうか?


乗り越えた人は超人なのでしょうか? 私は、どう
してもそうなれそうにありません。…







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