貧者の一灯 ブログ

信じれば真実・疑えば妄想

貧者の一灯・漢の韓信シリーズ

















第二章:呉の興隆 呉中に危機あり  


思い悩んだ伍子胥は、竹簡に書をしたため、
使者を通じてそれを申包胥に渡した。


その内容は次のようであった。


「……先の呉と楚との戦いにおいて、旧縁を忘
れて君に苦しい思いをさせてしまったことには、
申し訳なさを感じている。


しかし、どうか許してほしい。親兄弟を楚によっ
て殺された私には、結局復讐するしか道は残
されていなかった。


なぜなら、私がそのことを言葉にして国に訴えた
ところで、国がその罪を認めるはずがなく、私は
泣き寝入りするしかなかったからだ。


今、この世の中において、自分の主張を効果的
に人々へ伝える手段としては、武しかない。  


それはおそらく君も感じていることだろう。  


君がどんなに人道的で、愛に満ちた行動をとっ
たとしても、それは実際に君と接した人物にしか
伝わらない。


それに対して武は、不特定多数の人々に共通
の恐怖を与え、より深刻な影響力を与えること
ができる。  


だが、いま私は立ち止まらざるを得ない状況に
さしかかっている。どうか、君に助言を賜りたいのだ。


私のいる呉国内に、非常に有能な男がいる。
その男は、頭がよく、状況をよく観察し、深く
掘り下げて物事を理解しようとする。


彼はいま、その自分の能力を非常に持て余し
ているのだ。  


彼はもともと、戦争の意義を追及しようとする
学者だ。


その論点はなぜ国は戦争をするのかということ
に留まらず、どうやって敵の意表をつくかなど
の方法論にまで至り、その知識については私や
君などが及ぶところではない。


おそろしく、彼はこの点について造詣が深い。  


その彼がいま、呉はもう戦うべきではないと言っ
ている。平和のための外交努力をするべきだと。
そう主張して、彼は宮殿に出仕しないでいるのだ。


しかし状況はそう簡単ではない。呉はすでに
楚を攻撃し、楚の人々に復讐の種を蒔いて
しまった。


また、このところ越は呉を侵略しようとして国境
付近に軍を配置させている。もはや、これらの
国々とは話し合いの余地などない状態だ。  


もちろんその原因が呉に、ひいては私自身に
あることはわかっている。


楚を戦乱に陥れたのも私ならば、戦争に明け
暮れて国内に隙を作り、越につけ込まれる原因
を作ったのも私であると言えるだろう。


だからこのようなことを君に相談することは、実に
厚顔無恥であるように思えてならない。どうか、
許してくれたまえ。  


私は、呉は戦いによって発展するとしか思えない。
しかし彼は、それを否定するのだ。


戦いを主導する能力は、彼にしかないというの
に。私は、どうやって彼を説得すればよいのか。


私が知っている限り、その答えを知っているのは、
君だけだ。どうかこのことについて、教えてほしい。


私は彼をどう動かせばよいのだろうか」 この書
を受けた申包胥は、あろうことか笑いを漏らした。


それは呉の窮乏を馬鹿にして笑ったのではない。
友人である伍子胥が、いまだ自分の生き方を
貫いていることに安心した笑いであった。


「伍子胥は、また戦おうとしている。飽きない男だ」


嬴喜は、これについて尋ねた。 「どう助言なさる
つもりなのですか」  


包胥はひとしきり考えたあと、答えを示した。
「その頭の良い男に向かって、次のように言え、
と伍子胥に伝える。


『呉の武力は楚を脅かし、楚の国民は呉の武威
にみな平伏している。天下に呉による平和が訪れ
ようとしているのだ。


このうえは、越の国民にもそれを示すがよかろう』
と」  


嬴喜は驚いた。 「戦いを助長するようなことを
言うのですか。よりによって、あなた様が」


「意外だろう。そうかもしれぬ。しかし、実際は
伍子胥が書簡の中で述べた通りだ。


私がやっていることは、実際に私と接した者に
しか伝わらない。これに対して武力で相手を従
わせるという手段は、実は効率的なのだ」


「武を用いて世に善政を布く、ということですか。
呉にそれが可能なのですか」


「わからない。しかし、伍子胥にはそれを期待して
もいいと思うのだ。


きっと彼は、平王の死体を鞭打ったことを心
から後悔しているよ。


いにしえから、復讐を果たした人物は世に数多
くいる。しかしその後、彼らの気分が爽快になっ
たという事実を、私は聞いたことがないからな」 …













※… 引き続き入院9日目。


相変わらず、同室のAさんとBさんは大声で
おしゃべりをしている。


また、ある特定の看護師さんの悪口がはじまり
「あの人、子どもいないらしい」と言い出した。


「最近多いなぁ、昔と違って、結婚しても子ども
おらん人」 と、Bさんが口にする。


はい、すいません、私も子どもいません。 結婚
を決めたとき、夫婦で子どもを作らないことで
意見が一致していました。


だから好き好んで子どもを作りませんでした。
「子どものおる人のほうが思いやり持てるやん。
だからあの看護師さん、あかんねん」と、Bさん
は続ける。 ……


悪かったなと、私がその看護師さんの代わりに
反論したくなったが、堪える。


しかし「子どものいる人のほうが思いやり持てる」
って、どういう根拠だ。


子どもがいてクズでロクでもない人間、世の中
に山ほどおるやないか。 要するに、子どもの
いる自分は思いやりがあるよと言いたいのか。


会話を聞いてイラっとはしていたが、これも
何かしらネタになるからと気持ちを抑える。


※…肉を食べたら……


この日、夕食に豚の生姜焼きが出た。美味し
かったし、魚多めの食卓に、小さくはあるけれ
ど肉の塊が出たことに歓喜する。


魚も美味しいけど、やっぱり肉! 生命力が湧く。
肉を食べてご機嫌で眠りにつこうとしたが、この
日、とんでもないことが起こった。


夜の九時ごろに眠り、その後、消灯して、ふと
十二時すぎに目が覚めた。 なんだか嫌な予感
がしたのだ。


まさかと思って、トイレに行く。…生理が来ていた。


夫に持ってきてもらったパンティライナーのおか
げで下着は汚れてはいないが、間違いなく、
生理だ。


50歳になって低用量ピルの服用はやめたが、
毎月28日周期で、きっちり生理が来ている。
本当にちゃんと来るので、次の生理は本来なら、
一週間以上先のはずだったから、ナプキンの
用意もしていなかった。


なのに、なぜ、お前は、今、訪れるのだ……
早すぎるよ……。


なんで閉経してないの、私! まさか使うと思って
いなかったコレ 仕方がないので、ナースコール
を押すと、看護師さんが来てくれた。


夜中なので、声を潜めながら、「すいません、
生理が来ちゃって、ナプキン用意してなくて」
と告げる。


看護師さんが、「ちょっと待ってくださいね。
ここの階、生理用品は置いてなくて……
ほかの看護師たちに聞いてみます」と姿を
消した。


ナプキンはないのか。そりゃそうだろう。循環器
系の入院患者って、私が見かけた限り、みんな
とっくに生理なんて終わってる年代の人たち
ばかりだ。


しばらくして看護師さんが戻ってきて、「すいません、
看護師誰もナプキン持ってないんです。


病院内のコンビニは夜は閉まってるし……


産婦人科で産褥パッドもらってきます」と告げら
れる。 そうだ、この病院にはコンビニがあったが、
夜は閉まっているのだった。


そして産褥パッド……。 聞いたことはある。 子ど
もを産んだ人が、そのあと子宮内から出るもので
下着が汚れないように装着するものだとは。 なん
となく、知っていた。


でも、具体的にはわからない、どんなものか想像
したこともない。 だって子どもを産んだことないし、
これからも産む可能性はなく、自分とは一生縁が
ないもののはずだったから!


また少しして、看護師さんが「産褥パッド、持って
きました。すいません、有料になります。


明日になったらコンビニが開くので、それまで
これで我慢できますか」と言われて、そりゃ我慢
するしかないだろうと御礼を伝えて産褥パッドを
受けとる。


大きいサイズ3枚と、小さいサイズ3枚だ。 私は
トイレに行き、綿のパンツに産褥パッドを装着する。


羽のついていない、分厚いナプキンといった
感じか。 私が十代の頃のナプキンて、こんな
感じだったなぁ~


今はずいぶんと薄くて使いやすくなったなぁと
懐かしい気持ちにもなる。


それにしても、好きに風呂にも入れない入院中に、
なんで生理になるの私! とっとと閉経しろよ私!


めんどうくさすぎる ただでさえストレスたまる入院中
に、生理という新たなストレスを抱えて、ついでに
生理痛らしく下腹部も重くて、気持ちがどよ~とな
ったままベッドに横たわる。


もし生理の血でパジャマやシーツ汚したら、それを
看護師さんに伝えるのも嫌だし、「このおばさん、
まだ生理あるのか」と思われるなと余計なことを考え
ながら。 同時に、笑いだしそうになっていた。


生理が来て、まさか一生、縁がないはずだった
産褥パッドというものをつける日が来るなんて! 
結局、産褥パッドは、使わずに済んだ大1枚、
小1枚が、退院後の今も手元にある。


捨てるのは持ったいない気がして、だからといっ
てあげる人もいないし、これも記念かと持って帰っ
てきたのだ。


本当に使い道がないまま、ナプキンやタンポン
と一緒に自宅にある。 あらためて思った。


やっぱり女って、めんどくさっ!!…








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