貧者の一灯 ブログ

信じれば真実・疑えば妄想

貧者の一灯・番外編














※…





※… そして母になる

私は助産師、歴三十五年。助産師は、戦前は「産婆」
と言われていた職業だ。最近は、助産師と言った方
がわかりやすく伝わるようになった。


助産師は、誰もが産まれてくる時に、一番にその
肌に触れる人、最初に出会う人。 出産の介助時は、
新生児が目を開けた時に最初に見えるのがママの
顔であるよう配慮はしているつもりだ。


だが、うっかり私たちが先に目を合わせてしまう時
もあり、それは本当にごめんなさい。


もちろん赤ちゃんは、この人ママじゃないって
わかるから違う意味でも泣きますけど。


助産師はお産という戦場を共に闘うママの戦友。
英語では、母と子の間に立つ者として、ミッド・
ワイフと表現される。


助産師とは、母と子の傍に寄り添い、母子関係
を見守り支えることを業とする者だ。


※… 母となり、子の愛を知る


助産師は出産と初期の育児支援のプロであるはずが、
出産前の私は、若気の至りというか、子どもの育て
方も知らないくせに、偉そうに子育て支援とか言う
「知ったかぶり助産師」だった。


長男が生まれる直前、切迫早産で入院中暇だった
私は、マンガ『ママはぽよぽよザウルスがお好き』
(青沼貴子、婦人生活社、を読んで、初めて子ども
は怪獣と知った。


堅苦しい育児書の知識はほとんど使えないとわか
った。歩くようになると子どもはママめがけて
突進してくる。


本当に「男の子は痛い」、散らかし汚しまくり怪獣
で破壊の天才だ。


私の育児のバイブルは『ぽよぽよザウルス』、そし
て、参考書は『ひよこくらぶ』や『ベビモ』など
の育児雑誌。ママたちの経験談、


現在進行中の育児の様子が掲載されていて育児書
より参考になり励まされた。助産師なのに子育て
はこんなに大変と知らなかった。


親の支援がなかった私は、育児雑誌と保育園の保育
士の先生方に支えられて、なんとかやってこられた。


子育ては知識があっても経験のない人にはわから
ないことを思い知らされた。そんな情けない母親
だったのに、子どもは「ママ、ママ」と私を慕っ
てくれる。


私の泣き顔にさえ、子どもは笑顔で応えてくれる。
抱きしめると温かい。抱きつかれると胸がきゅん
とする。


握られた手の向こうの可愛い笑顔に癒され、愛お
しさでオキシトシン全開になる
(オキシトシンとは別名子育てホルモン、
幸せホルモン)

さっきまで大声で泣いていた憎らしい小悪魔、なの
に涙がほっぺについたままにっこり笑われると天使
だったのかと思う。


子どもと一緒に過ごす時間の中で、一喜一憂しな
がら、実は、私こそ子どもに愛されているのだと
知った。


こんな私を慕い、頼りにしている、子どもは健気だ。
もっと上手に育ててくれる親のところに生まれて
きたら、こんなに大変な思いはしなかっただろうに、
なんで私のところに来てしまったかな。それだけで
奇跡だ。


子どもから受けた愛に私は応えられているだろうか。


※…病む母性が好き


私は少々変わっている方の助産師だ。 助産師を
目指す人の多くは、母性看護学実習で立ち会った
出産に感動して進学し、実際、助産師は出産を中心
に活動しているが、私は児童虐待を防止したくて
助産師になった。


看護の道に進む決心をしたのは、マザー・テレサ
の活動に心を打たれたことがきっかけで、進学当
初は死の看取りができる看護師になりたい、看護
師になってインドに行くつもりでいた。


そして、実は、子どもは苦手だった。子どもは
純粋で無垢だから、心を見透かされるようでコワ
い存在だった。だから、助産師にだけはならない
だろうと思っていた。


子どもの看護にハマる それが、小児看護学実習で
子どものケアにハマった。


受け持った子どもは七歳の女児Mちゃん。小児
肺高血圧症という難病。 当時、その病気で成人
まで生きられた例はほとんどない疾患だった。


私の看護は、症状改善のため高気圧酸素療法を
受けることになったMちゃんを、高圧酸素釜
(深海6000みたいなポッド)に入っている一時間
半を何とか寝ないで、その中で過ごせるよう、
釜の外からマイクを通して語り掛け、遊ぶこと
だった。


毎日、今日は何をして遊ぶか、飽きさせないように
何をしたらいいのかわからず頭を抱えた。


子どもと遊ぶ実践、子どもが苦手の人にとっては
大変な任務だった。料理が苦手な人が、毎日の献立
を考える主婦 となったようなものだ。

そんな行き詰った私を助けてくれたのは、友人の
保育士の 学生だった。子どもが喜ぶ遊び、折り紙、
工作、絵本の読み聞かせの方法など、様々な遊びを
集中講義してもらった。

保育士って子どもと遊ぶプロなんだと感動した。
その特訓 の成果が実った。

Mちゃんとたくさんの絵本を読み、一緒に絵を
描き、手遊び、歌、紙芝居など、今まで経験の
ないことばかりだったが、きっと誰よりも自分が
楽しかった。

治療は順調に進み、Mちゃんの頬がピンク色になり、
コロコロ した可愛い笑い声が聞こえる様になった。

実習最後の日、Mちゃんから手作りのプレゼント
をもらった。いつ、これを作っていたの? 

付き添い入院をしているMちゃんのお母さんから
「学生さん には内緒にねって、毎日少しずつ作っ
ていたの」と、渡されたものは、フェルトで作っ
たミニトマトにお顔がついたマス コットのストラップ。

早速、聴診器に付けさせてもらった。

「きっと素敵な看護師さんになれるよ! ありが
とうござい ました」というお手紙も添えられて
いた。熱いものがこみあげ、涙が止まらなかった。
感激だった。 

そして、この後何年生きられるかわからない死の
不安に、七歳の子が、その母が、懸命に向きあっ
ている姿に、その強さと運命の残酷さに、患者さん
の前で泣いてはいけないと思いながらも、お母さん
と抱き合って泣いた。

そのマスコットのトマトちゃんは、今も、いつも
くじけそうになる時、私を支え励ましてくれる大切
な宝物だ。

Mちゃんは、今はもう天のどこかで私を見てくれて
いる。そう思うとくじけてはいられないと思える。
ここが私の人生の原点だ。 …











※…
精神科医、藤野智哉(ともや)氏の言葉より…

「幸せ」って忙しかったり、疲れていたりするとき
は感じにくいことがあります。

おいしい食事やきれいな風景、お気に入りの洋服、
かわいいグッズなど、「あ、幸せ」って思えるか
どうかは、自分のコンディションに左右されます。

好きな食べ物を食べても、疲れているときは「あん
まりおいしくない」って感じたり。 疲れているとき
は、趣味の映画を観る気も起きなかったり。 だから
しんどいときは、まず、「休む」が大事なことです。

何も診断がついてないのに会社を休んだり、しんどさ
をうまく説明できないのに家事を放棄することに罪悪
感をもつ人もいるかもしれませんが、しんどいまま
仕事や家事をやっていては、いつか破綻します。

これがベストの選択だと自分に言いきかせて、休養
してくださいね。

※…
「私は『うつ』なのかもしれない」と思って診察に
こられる人も もちろんいらっしゃいます。

難しいのですが、「うつ」という言葉は一般的に
よく使われていますけど、精神科医は「うつ病」
と「うつ状態」という言葉を分けて使っています。

「うつ病」というのは、病院を受診して診断がつく
病名ですが、「うつ状態」という のは、病名では
なく気分が沈みしんどい 「状態」のことなので、
誰だって短期的には なりえるんです。

たとえば失恋したり、ペットが亡くなったときなど、
ショックなことがあれば一時的に「うつ状態」にな
ります。

3日くらい寝つきが悪かったり、食欲がなくなったり、
やる気が起きなかったりします。 これって人間とし
てある意味、自然なことなんですね。

とくに「うつ病」には当たらないことも多いんです。

「うつ状態」の人、すべてが「うつ病」になるわけ
ではないです。 こういった「うつ状態」のときに
大切なことは「休む」ことです。

心がダメージを負っている、疲れているんだから
休むというのは、基本のキです。

《食事と睡眠をちゃんととって休めば、心も体も
整っていく。》

そうすれば、病気でなければ自然と幸せを感じる
心や体に戻っていったりします。

しんどい出来事をきちんと受け入れるために必要な
過程なんですね。 疲れていたり、しんどいときは、
「まず休む」を覚えておいてください。

※…
「適切なタイミングで休めなかったからうつになっ
てしまった」というパターンが多い、という。

休めない人は、「まわりに迷惑をかける」とか
「診断書もないのに休めない」とか、「ずる休み
と思われる」等々と、考えてしまうからだ。

つまり、真面目な人に多い。

※…
斎藤一人さんは「真面目」についてこう語る。
『一人さんは、お弟子さんたちに「真面目」と
「立派」を禁止しているんです。

なぜですかって、日本人は、真面目と立派って自己
犠牲だと思っているからなの。

真面目で立派に生きるために、自分のことは後回し
にしなきゃいけない。 自分を優先しちゃいけない。
みんなそう勘違いしているから、ダメだよって言う
んです。

自己犠牲ってね、他人には優しいかもしれない。
でもね、そのしわ寄せが、自分や家族にいっちゃう
んだよ。

自分が壊れちゃったり、奥さん(もしくは旦那さん)
とか子どもとかが我慢のはけ口になっちゃったりね。

自分を犠牲にするだけじゃなく、大切な人まで犠牲
にしてしまうんです。

だから、真面目と立派はやめなって。 まずは自分
に優しく。 それができたら、人にも優しくすれば
いいんだよ。

「しんどいときは、まず休む」という言葉を
胸に刻みたい。








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