貧者の一灯 ブログ

信じれば真実・疑えば妄想

貧者の一灯・一考編

















※…形見のバッグ


兵庫県加古川市の団地内にある集会所。月2回、
住民たち約70人が集まって唱歌や海外ミュージ
カルのテーマ曲を練習する。


女性に交じり、団地に住む男性(81)が背筋を
伸ばして歌声を響かせる。 「思い切り声を出せる
と気が晴れる。唯一の生きがい。


若い頃にみんなとなじみになれたから今の自分
があると思うんです」  


約40年前、3歳上の妻と息子2人の4人で同県
尼崎市から移ってきた。近所も子育て世代。


ソフトボール大会など地域行事に積極的に参加
し、この春まで町内会長を務めた。地域とのつな
がりに支えられながら日々を送る。  


妻とは5年前に死別。


糖尿病の影響で脚が弱り、妻がつえ代わりに使っ
ていたキャリーバッグは今も捨てられない。 … 


そのバッグを商業施設に買いにいった日のことだ。
いつもは一緒に外を歩くときにつないでいた手を
つい離してしまった。  


「売り場は事前に調べていたから分かるやろう
と思ってつい先に行ってしまいました。そしたら
後ろから『おーい、おとうさーん』と呼ぶんです。


ゆっくりとしか進めない姿が本当にかわいそうで
ね。体力も落ちて1人で歩くのはもう難しいのは
分かってたんやけど、なんで離したんやろう」  


妻は2002年から腎不全で毎年入退院を繰り返し、
その5年後に透析治療が始まった。10年以上の
闘病の末、血圧低下で透析ができなくなった。


「延命はいいで」と言い残し、最期は苦しまずに
済んだ。79歳だった。  


男性は、看病のために60歳を超えても務めて
いた公共施設の管理会社を辞めた。


病院への送迎は週に3日。1回に4~5時間か
かる透析治療をそばで見てきた。


妻が亡くなって小さな安どもあったが、悲しみ、
後悔、いとおしさが胸に渦巻く。  


「妻はもともと辛い味が好きだったんですよ。


『食事制限がつらい』とよく言ってました。早め
に透析を始めていれば少しはましやったかも
しれない」  


「最後は階段を下りるのも大変。もっとリハビリで
きる病院に移っていたらよかった。でも長生きし
たらそっちの方がつらかったかな」  


妻の透析が始まった翌年、男性の胃にもがん
が見つかった。初期段階だった。


手術のために入院した2カ月間、治療の合間に
毎日タクシーで見舞いに来てくれた。  


「どんなことでも物事を全然悪くは考えない人で
した。『きっと次はいいことある』って僕を励まして
くれました。


今でも朝目が覚めたら、一瞬隣の布団に妻が
寝てるんかなと思う。


すぐに『あれ?あ、おらんわ』と気付くんです」  


妻を失ってから衰えを感じる。車の右左折が遅
れがちになり、運転免許を返納した。


35年間続けてきた日記も書こうとしたことや漢字
が思い出せず、途切れる日が増えてきた。


老いの実感と妻への思いが交錯する。  


食事の準備とかができるうちは自分でやらな
あかん。


キャリーバッグは妻の形見。自分が歩けなくなっ
たら使うつもりです」…



※…油 絵


兵庫県加古川市内の高齢者住宅の一室。入居
20年になる出原あゆみさん(82)=仮名=が、
絵の具が染みついたイーゼルにキャンバスを立
てかけ、右手の鉛筆を滑らせる。


薄い線でスケッチしたのは濃いピンク色のベゴ
ニア。脳梗塞の後遺症で右腕に力が入りづらい。


60代から打ち込んだ油絵は難しくなったが水彩
画ならできる。完成させ、展示会に出品した。  


「油絵は色を重ねるから途中でいくらでも修正が
きく。思いのまま描けた。


水彩画は最初に構図をきちっと決めないといけ
ない。難しさはあるけど、できれば深い喜びが
あるんです」  


神戸市内で小学校の教員をしていた。58歳で
退職し、離婚がもとで体調を崩して入院した。


退院後、自宅からスケッチブックを抱えて毎日
1時間ほど歩き、建設中の明石海峡大橋を色
鉛筆で描いたのが絵との出合いだった。  


加古川に移り住んでからは高齢者大学に入り、
サークルで油絵を始めた。


岡山県の備中国分寺、長野県の上高地など
キャンバスを抱えて旅行に出掛けた。


胸がすくような山並みや草原の風景を好み、
70歳を前に古希記念の個展も開いた。  


「絵画サークルに入ったころに(東播地域の
ケーブルテレビ局)の取材を受けたんです。


自分の絵の前に立って『死ぬときは筆をポトン
と落として死にたい』って答えたこともありました」  


「生まれつき絵が好きだったのをそれまで気が
つかなかったんじゃないかしら。


キャンバスも30号、100号とだんだん大きくなっ
て楽しくて楽しくて仕方ない。もう夢中でした」  


充実した姿を喜んでくれたのは4歳年下の弟だ
ったが、脳梗塞になり8年前に亡くなった。


高齢者住宅の保証人を引き受けてくれ、頼りに
していた。ショックは重なる。出原さんも直後に
74歳で同じ病気を発症した。


軽症だったため手術せずに済んだが、重たい
画材を運ぶことができず、薬品と湯につけて筆
を洗うのもおっくう。時間を忘れて没頭した油絵
が遠のいた。  


「筆を洗うのは10分ほど。だけど何回もこすら
ないといけない。準備と片付けが大変。体が言
うことをきかないのが歯がゆい。


それでも絵との縁は切りたくないと思って絵はが
きや小さいスケッチブックに水彩画を続けました」  


高齢者住宅の共用通路にはこれまで描きためた
油絵2、3点ずつを順に飾るようになった。


「あなたの絵を見ると落ち着くわ」。見てくれた
人の感想がうれしかった。


80歳を超えて残りの人生を考えようと高齢者大
学の大学院に進んだ。


絵を始めてからの20年近くを振り返り、気持ち
を切り替えた。


「描きたい思いを大切にしよう」  


5月に描いたベゴニアの絵はもう1枚ある。数年
ぶりに油絵に挑戦した。重なる花びらの陰影を
表現できず、背景を足しても満足できる仕上が
りにはならなかったが、意欲は衰えない。  


「今までも完成しないままの絵はたくさんありま
した。いつか納得のいく油絵が描きたい。その
気持ちは変わりません」…













※…人間関係で大きな要素となるのが「相性」です。


ウマが合う、ソリが合わない、などといったりします
が、相性がいいか、よくないかで、人間関係は心
地よいものになったり、反対にギクシャクして気詰
まりなもの、疲れてしまうものになったりします。


ここにも自己肯定感が関わっています。 自己肯定
感の高い人は人間関係で悩むことはとても少ない、
といっていいでしょう。


彼ら、彼女らは自分を慈しむ心、自慈心が高く、
それは他人を慈しむことにつながります。


自分に対して思いやることのできる人は、誰に
対しても思いやることができ、おおらかに接する
ことができるのです。


自己肯定感が高い相手とはもちろん、そうでな
い相手とでも、その人を受け容れ、うまくやって
いくことができます。


もちろん、人間ですから相性がいまひとつよくな
い、という相手もいるでしょう。 しかし、そういう

相手に対してもこう受け止めます。


「この人は少し、他人の心にズカズカ入ってくる
ところがあるけれど、彼はそういう人なのだという
ことがわかったうえでつき合っていけば、ぜんぜ
ん問題なしだ」


一方、自己肯定感が不足している人は、相手に
対して「見返り」を求めてしまいがちです。


見返りといっても、相手に同じレベルのことをして
もらうというだけでなく、自分が相手のために何か
したら、とにかく「リアクション」が欲しいのです。


たとえば、感謝です。 相手から「ありがとう」の言葉
があったり、感謝の表情を見せてくれたりすれば、
「ああ、自分のしたことはよかったんだ」と胸をなで
下ろすのですが、それがなかった場合、考え込ん
でしまいます。


「自分がしたことは、かえって相手にとっては迷惑
だったのかもしれない。余計なことをしてしまった
のかな....」 と不安でいっぱいになるのです。


そんな不安でいっぱいになっても、相手が自己
肯定感の高い人であれば、慈悲の心を持って
見てくれていますから、そのあたりを察知して、
フォローも怠りなくしてくれると思いますが、


相手がそうでない場合は、「見返りなし」の場面が
繰り返されることにもなります。


すると、その相手に対して、 「自分とはウマが合
わないんじゃないだろうか。そうだ、きっと相性が
悪いのだ」 という思いにとらわれることになるのです。


それだけならまだいいのですが、もっと悩み込んで
しまう人の場合、 「この人に余計なことをして不快に
させてしまった。やっぱり自分は世のなかから必要
とされていないんだ」 と、自分で自分を強く責める
ことすらあるのです。


こうなるともはや、その相手との問題にとどまらない
事態となってしまいます。


自分自身の存在価値を貶めることになりかねず、
そんな状況で人間関係がうまくいくはずもありま
せん。


自分の行為に対して、見返りがあろうとなかろうと、
心が揺れたりしないのが、自己肯定感の高い人
です。



※…「自己肯定感」と「自立」は密接な関係がある。


たとえば、大人になっても自立できていない人に
は、「人のせいにする」「被害者意識が強い」「人
に依存する」「親離れできない」「自分の意見がな
い」「責任転嫁する」「自分で決定できない」「自己
中心的」等々の性向がある。


そして、自己肯定感が低い人は、「自分に自信が
なく卑下する」、「他人の評価を気にする」、「物事
を素直に受け取れない」、「他人に寛容ではない」、
「何事も否定的に捉えやすい」、「失敗を恐れ消極
的でチャレンジしない」、「精神的に不安定」、「過去
にとらわれやすい」等々だ。


自分を認め、自分は価値のある人間である、と
思える「自己肯定感」の高い人は、気持ちに余裕
ができ、人にも思いやりの心で接することができ、
寛容になれる。


そういう人の周りには人が集まり、人に好かれる。


自立するには、自己肯定感があることが必須だ。
逆にいうなら、自己肯定感が低い人に、自立した
人はいない。


また、「見返り」を求める人も、自立していない人。


author:川野泰周(たいしゅう)氏の言葉






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