貧者の一灯 ブログ

信じれば真実・疑えば妄想

貧者の一灯・歴史への訪問




















※…
「ごめんなさい。今晩、泊めてください」  
お百姓さんが、宿屋の前でそう言うと、


「はい、ただいま。さあ、どうぞどうぞ」  
宿屋の女中(じょちゅう)さんは、お百姓さんを
部屋に案内しながら言いました。


「ご飯を先にしますか? 
それともお風呂にしますか?」


「へえ、お風呂に入れてもらいましょう」
「では、こちらへ」  


お百姓さんは女中さんに案内されて、
お風呂場へ行きました。  


お風呂場には、ぬかと塩が置いてありました。  


むかしは石けんも歯ブラシもなかったので、
ぬかで顔を洗い、塩で歯をみがいたのです。  


でも、このお百姓さんは、そんな事は知りません。
「はあ、これはきっと、ぬかダンゴを作って食べろ
というんだな」  


そう思い、ぬかに塩を入れて水でねり、ダンゴ
を作って食べました。


「こりゃうまい。こいつは、なかなか上等な
ぬかじゃ」


お百姓さんは、ぬかダンゴをすっかり食べて
しまいました。  


さて、お風呂からあがって部屋にもどると、女中
さんがご飯を持って来ました。  


それを見て、お百姓さんが言いました。
「おら、お風呂でぬかダンゴを食ったから、
もう、お腹がいっぱいじゃ」


「えっ? ぬかダンゴ?」
「ああ、とてもうまかったよ」  
女中さんは、ビックリしました。  


でも、お百姓さんに恥(はじ)をかかせては
いけないと思って、そのままご飯をさげました。


(もしかしたら、明日の朝も顔を洗う時に、
ぬかを食べてしまうかもしれない)  


親切な女中さんは、ぬかと塩の代わりに、
おもちを置いてあげました。  


さて次の朝、お百姓さんがお風呂場に行って
みるとどうでしょう。  


ほかのお客さんは、ぬかを手ぬぐいに包んで
顔を洗っているのです。


「何と、ぬかは顔を洗うもんだったか。
こりゃ、とんでもない恥(はじ)をかいてしまった」  


さて、お百姓さんが顔を洗おうとすると、
目の前におもちが置いてあります。


「よし、今度は間違わないぞ」  


お百姓さんはおもちを手ぬぐいに包んで、
ごしごしと顔を洗いました。  


するとおもちがとけて、顔にベタベタとつきました。  
それでもお百姓さんは、うれしそうに言いました。


「やれやれ、今日は恥をかかずにすんだわい」  
ところが顔は、おもちだらけです。  


それを見た女中さんは、とうとう腹をかかえて
大笑いしました。…















※…
知的障碍のある長男の誕生、夫の死、そして
ご自身の大病。 度重なる試練に見舞われ、
悲しみのどん底に沈んだ岸田ひろ実さん。


そんな岸田さんを救った娘さんの言葉


ある日、娘が車椅子を押して私を 街に買い物
に連れ出してくれたんです。


目的の店はすぐ目の前なのに車椅子では遠回
りしないと 行けないというようなことがいかに多い
かを、 この時の外出で初めて実感しました。


それともう一つは人の目線ですね。 どこに行っ
ても「うわぁ、かわいそう」 といった目で見られて
しまう……。


「車椅子で何とかなると言ったって、何ともなら
ないじゃない」 という感情がワッと込み上げて、
一所懸命に頑張ってきたものが 音を立てて崩
れるようでした。


それが本当に辛くてレストランに入った時、
「もう無理」と思って初めて娘の前で泣きました。


「こんな状態で生きていくなんて無理だし、母親
として、してあげられることは何もない。  


お願いだから、私が死んでも許して」って。…
言いました… 


しかし娘は「泣いているだろうな、死なないでっ
て言われるんやろうな」 と思ってふと見たら普通
にパスタを食べていました。…


そして「知ってる、知ってる。死にたいんやったら
いいよ。 一緒に死んであげてもいいよ」と言った
んです。


続けて 「でも、逆を考えて。


もし私が車椅子になったら、ママは私のことが
嫌いになる? 面倒くさいと思う?」と聞きました。


「思わないよ」


「それと一緒。旅行に行きたかったら行けばいいし、  
歩けないなら私が手伝ってあげる。  


大丈夫だから私の言うことを信じて、もう少しだけ
頑張ってみようか」 と言ってくれたんです。


私の生き方や考え方が大きく変わったのは
それからです。 …








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